この政略結婚に、甘い蜜を
「新婦。あなたは病める時も、健やかなる時も、彼を愛し、共に寄り添い、他に寄らないことを誓いますか?」

神父がそう華恋に訊ねると、華恋の頭の中に初めて零と会った時のことから今日までの日々が蘇ってくる。

自分に自信がなく、会社の跡継ぎがほしい両親と、婿養子にならなければ社長になれない零によって強引に進められた政略結婚なのだと信じて疑わなかった。

だが一緒に暮らしてみれば、彼はまるで割れ物に触れるように優しく、華恋のことをいつだって気遣ってくれた。自信を持っていいと言ってくれた。

その優しさや言葉を信じることが最初はできなかった。だが、零が諦めることなく愛を伝えてくれたおかげで、華恋の心は前へと動いていくことができたのだ。

「はい」

想いを伝えたあの日のように、華恋の胸は幸せでいっぱいだ。泣いてしまいそうになりながら、華恋は微笑んで神父の言葉に返事をする。そして、永遠を誓う時がやってきた。

「では、誓いのキスを」
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