この政略結婚に、甘い蜜を
華恋が口を開く前に、龍羽の顔が華恋の耳に近付く。そして、ゆっくりと囁かれた。

「零は本気で今まで人を愛したことがない。きっと嫉妬深い男だろう。何かあったら、いつでも相談してほしい」

「は、はい……」

華恋が少しドキッとしながら返事をすると、「リュウハ!」と嫉妬したように頬を膨らませたエミリーが龍羽に抱き着き、エミリーと話していたはずの零も、「兄さん、華恋は僕のお嫁さんなんだけど?」と龍羽を睨む。

「零、そんな嫉妬深いと嫌われてしまうよ。エミリー、僕の目に映る女性は君だけだから嫉妬しなくても大丈夫だよ」

Kittyと言いながら、龍羽はエミリーを連れて華恋たちの元から離れていく。二人がいなくなると、華恋の手がそっと零に包まれる。

「兄さんはかっこいいし、いずれ鍵宮グループを背負っていく男だけど、好きになるのはダメだからね。もう華恋は僕のものだから」

互いに愛し合うカップルならば、このような台詞を言われればときめいたりするのだろう。だが、その重い告白は自身を縛り付ける鎖のように感じ、華恋は零から目を逸らしてしまう。
< 41 / 186 >

この作品をシェア

pagetop