この政略結婚に、甘い蜜を
そんなことを考えていると、まもなく離陸をするというアナウンスが響く。そのアナウンスが頭に入ると、華恋は膝掛けの先をしっかりと掴む。離陸する際のふわりと宙に浮く感覚が苦手なのだ。

飛行機がゆっくりと動き出す。握り締める手に力が入っていく華恋だったが、華恋の小さな手に優しく零の手が重なった。

「実は僕も離陸する時の感覚が苦手で……。ごめん、手に触れていてもいいかな?」

驚く華恋に零は照れ臭そうに説明をし、前を向く。その横顔は耳まで赤く染まっていた。赤い耳、そして幸せそうな目を見ていると、華恋の心の中に温かい何かが込み上げ、気が付けば飛行機は離陸していた。

「ありがとう。華恋の手の温もりのおかげで怖くなかった」

零の手が離れていく。重なっていた部分は時間が一秒経つたびに熱が消えていき、華恋は黙ったまま重なっていた手を見つめていた。

(何だか変だな、私……)

胸がやけに温かい。だが、温もりを感じてしまうと呪いの言葉が蘇る。

『こっち見んなや、ブス!』
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