この政略結婚に、甘い蜜を
「鍵宮家の御曹司様じゃありませんこと?」

胸元の空いたセクシーな赤いドレスを着た女性が零に近づいてくる。豊かな胸を強調するかのように腕を組み、女性は零の隣にいる華恋をジロジロと見て勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「こちらは親戚の方ですか?親戚の方の面倒は私の付き人に任せて、二人きりで楽しません?」

女性は熱のこもった目で零を見上げる。その時、華恋の心臓が嫌な音を立てた。零に対して恋愛感情は抱いていないはずだ。それなのに、胸が苦しくなっていく。

(何なの、これ……!)

ただ、零を女性の元へ行かせなくなかった。その一心で華恋は零の手を強く握る。すると、零が一瞬だけ華恋の方を見た。そして、嬉しそうに口角を上げる。

「申し訳ありませんが、僕は妻とパーティーに招待されたので、妻と過ごします。愛する妻を危ない男に攫われるわけにはいきませんから」

女性がポカンと口を開け、その隙に華恋は零に手を引かれて女性から離れていく。

(どうして、こんなにも嬉しいと感じているの?)
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