この政略結婚に、甘い蜜を
「お前、所詮成金やん。俺と釣り合わんし。家のことを考えてから告白せぇや」

呆然としている間に傑は教室を出て行き、華恋は一人取り残される。刹那、その体は崩れ落ちた。

言葉は凶器にもなる。つけられた傷は深く、血が溢れている。とても痛い。だが、それを治す薬や治療法はない。ただ苦しく、痛い。

「ッ……」

気付けば、華恋の目の前はぼやけていた。そして、両目から涙がどんどん流れていく。

最悪な形で、華恋の初恋は潰されてしまった。



その後、華恋は学園祭が終わるまで学校を欠席し、そこから地味でいるようになった。傑とはあの日以来話すことはなくなり、華恋は傑をずっと避け、傑も華恋に話しかけることはなかった。

そして、華恋はネイリストになりたいと思い、高等科を卒業した後はエスカレーター式で進学できる大学ではなく、専門学校へと進学し、傑とは会うことはなくなった。

(まさか、あんなところで会うことになるなんて……)
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