最初で最後の恋をする
「━━━━━みやびってさ」
「え?」
「ほんっと、可愛いのな…!」

みやびを間に挟み、厘汰と武虎が席についた。

「……////な、何?急に…////」
厘汰の言葉に、顔を真っ赤にする。

「だって、デコにキスしただけなのに顔真っ赤じゃん!」
「だ、だって…」

「みやびは、彼氏いたことあるの?」
武虎が言う。
「え?あるよ」

「「あんのかよ!!?」」
思わず声を張り上げる、厘汰と武虎。

「じゃあ、なんでわかんないの?好きって気持ち」
武虎が頬杖をつき言った。

「お父様がお付き合いしてみろって言うから」

「また、親父かよ……」
「みやびの親父さん、みやびのこと何だと思ってんの…?」
厘汰と武虎が切なそうに、顔を歪めた。

「でも、別れさせられたの」

「「は?なんで!?」」

「彼のお父様の事業が失敗したから。
もう、必要ないって言い出して……
酷い話でしょ?」
「最悪だな」
「だな…」

「私ね。
厘汰や冴木の言うような感情が、彼に対してあったかわからない。
でも、彼と過ごした日々は楽しかった。
もしかしたら、好きになれるかも?って思えるくらい」
「………」

「今考えるとね……」
「ん?」

「その時からかも?」
「何が?」

「感情がわからないの」

「みや…び…?」

「うーん…正確には、感情がわからないようにしてたのかも?お父様と冴木の言う通りに生きていれば楽だったから。感情に蓋をしてたのかも?」

「みやび」
「え?厘汰?」
厘汰がみやびの頬を包み込んだ。

「俺にはそのままぶつけてきていいよ」

「え?」
「俺は何があっても、みやびを放さない。
どんなみやびでも受け止めてやる。
だから安心して、感情をぶつけてきて?」

「うん……ありがとう!」


「あー、疲れたぁー」
講義が終わり、武虎が伸びをする。
「フフ…まだ、一限しか終わってないよ?」

「だってこんなの、久しぶりだから」

「え?久しぶりなの?」
「武虎!!」
「あ、いや!
あーそうそう!俺実は、前の大学ではサボっててばっかでさー!」

「フフ…もう!ダメだよ!」
「はぁーい!
でもここにはみやびがいるから、頑張れそう!」
「フフ…」
微笑む武虎に、みやびも微笑んだ。

「みやび、次は?」
「えーと…D棟の……」
「D?ってことは、向こうだな!」

「うん!
━━━━━━!!?」
みやびの足が、ピタッと止まった。
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