最初で最後の恋をする
みやびは、毒牙組のマンションにいた。

「ヤバ…可愛すぎ…////」
「この子が、國枝の姫…///」
「触っていい?」
「お前、きもっ!
みやびちゃん、怖がるじゃん!」

チームメンバーが、みやびに群がる。

でも、あまり怖いと感じない。
厘汰のことも“怖い人”と聞かされていた。
なのに今、一緒にいる。
怖いどころか、もっと知りたいとさえ思うのだ。


もっと…厘汰のことが、知りたい━━━━


「厘汰」
「ん?」
「ここには、女性はいないの?」
「いないよ」
「どうして?」
「キーキーうるさいから」

「お猿さん?」
「プッ!!チゲーよ!
女って、うるさいからやなの!ねちっこいし」
ソファに並んで座っている、厘汰とみやび。
厘汰は煙草の煙を天井に吐いて、笑いながら言った。

「私も女だよ?」
「うーん……みやびは俺が惚れた女だからいいんだよ!」

「厘汰は、私が好きなの?」
とても純粋なみやび。
何の曇りもない瞳で聞いてくる。

「あ、いや…す、好き…だよ…////」
こんなに面と向かって“好き?”と聞かれると、さすがに照れる。

「どんな“好き”?
苦しい?
会いたい?
放れたくない?
閉じ込めたい?」

「……っ…////」

真っ直ぐ澄んだ目で聞かれ、厘汰は動揺する。


仲間達がそんな厘汰を見て、驚愕していた。

“あの”厘汰が動揺し、気圧されている。



厘汰は何百人という毒牙組のメンバーを束ねる、カシラ。
圧力をかけることはあっても、かけられることはない。
いつも威圧感があり、仲間しか信じてない。
厘茉の一件から、固定の恋人を作らず色んな女を都合のいいように扱っていた。


「あ、ごめんね。
変なこと聞いて……
私も、厘汰のこと好きだと思う。
だけど、冴木が言うような気持ちはわからない。
それでも厘汰のこと、もっと知りたいって思うの!
これは“好き”ってことよね?」

「みやびは、純粋でほんと綺麗だね」
ずっと黙って聞いていた武虎が、みやびに言った。

「え?」
「焦らなくていいんじゃない?
少しずつ、知り合ってこうよ!」
微笑む武虎に、みやびは頷き微笑み返した。


「厘汰さん!」
「あ?」
「冴木って奴が、来てます」

「あー、もう時間か…」
「早いな、一時間」
厘汰と武虎が、残念そうに言った。

実は大反対する冴木に“一時間だけ”と約束して、マンションに来ていたのだ。

「厘汰、武虎、皆さんも。
楽しかった!ありがとう!」
ソファを立ち上がり、玄関の方に向かうみやび。

「みやび!!」
「え?」

「好きだ!!」
「え……」

「苦しい、会いたい、放れたくねぇ、本当はこのままここに閉じ込めてぇ!」
厘汰は振り返るみやびを引き寄せ、抱き締めた。

「━━━━━━厘…汰…?」
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