明日はきっと、晴れ。


side_律

橘 麗 (タチバナ レイ)
高校2年生 17歳


真っ黒な瞳に
真っ黒な髪

真っ白な肌に
薄桃色の頬

大きな瞳に
高くて綺麗な形の鼻。

細身の身体に纏われた制服はいつも清潔で
鎖骨ほどまで伸びた黒髪はストレートで艶が出ている。

無遅刻無欠席で成績優秀の優等生。
スポーツもできちゃう。

苦手なことは…ないらしい。
なんでも器用にこなすから、先生からは熱い信頼がある。

もちろん、生徒からも人気がある。
特別なことはしていない。

立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花

まさにその言葉が似合う人。



「2組の橘さん、今日もかわいいなぁ…」
「橘さんきたの?!」
周りの男たちはぼそっと呟きながら彼女を目で追いかける。
周りの女たちもうっとりとした表情で彼女を目で追いかける。

「おはようございます、みなさん」
そう彼女がニコッと笑って挨拶すれば男女問わず皆口籠もる。

まさにアイドルのような存在。


そうとは知らない彼女は小首を傾げて辺りを見回し俺を見つけて、

眉を下げてしゅんとした表情でおもむろに歩き出す。


「た、橘さんおはよう!」
「おはよう、橘さん!」
そんな彼女の姿に周りの生徒が慌てて挨拶を返すと
「だから麗でいいのに〜」
と嬉しそうに、ふんわり笑って振り返る。


何が怖いかって………
これを毎朝やってること。
とんでもない天然。



だけど_____


「あんたらのやってることは間違ってんだよ」

あの日、深夜の街に冷たく響いたその声は
紛れもなく、彼女の声だった。


『冷蝶』

白い髪に青い眼の女。
それはかつて、伝説だと言われた女。
どこの族にも属しておらず、
たった1人で数々の伝説を残した。



「おいお前、どうかこの子を守って_____」

あの日、自らを守るように小さく蹲った白と黒の髪が混ざった青い眼の女は俺にそう残して意識を手放した。
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