俺の世界には、君さえいればいい。




抱きしめられてる───…。

ちゃんとそう思える間違いのない2回目だった。



「さっ、くらいくん…っ、わっ、」


「…俺、由比さんを前にすると我慢できなくなるんです」


「が、がまん…?」


「…はい。もっと触りたいっていうか…順序なんか要らないって思うときもあって、」



くすぐったい…。

耳に、ほっぺに、背中に、私の身体中に櫻井くんの甘さが広がってくるみたいで。



「…あの、…順序は、やっぱり大切ですか、」



あれ…?
これって私に聞かれてる……?

そこで私に振られても分かるわけがないのに…!



「た、大切だと…っ、おもう…かな、」


「…そう、ですよね」



え、やっぱり間違えちゃった…?


櫻井くんが言っている“順序”というものが何を意味しているのかも分からないまま。

会話だけがどんどん先へ先へと行ってしまう…。



「いやそうだ、そうに決まってる。ごめんなさい、俺…由比さんからバレンタイン貰えるんだって思ったら浮かれたみたいで、」


「っ、…ふふっ、私も楽しみ」



初めて男の子に作って渡すチョコレート。

しかもそれは、本命も本命の大本命だ。



「……あの、やっぱり…順序は大切ですか、」



また同じ会話をリピートした櫻井くん───。



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