俺の世界には、君さえいればいい。
「あんなやつ」って…。
やっぱりゆっこは櫻井くんのこと、そこまで良く思ってないのかなぁ。
仲良くして欲しいのに、それに無表情ムッツリプリンスって呼ぶのはさすがに…。
そんなゆっこから貰ったチョコチップ入りのカップケーキは、嬉しさに食べるのが勿体なく思ってしまうくらいだ。
丹羽先生にも渡せるといいねと、心の中で伝えた。
「優子~!かなのちゃんも!はいこれチョコ!」
「えっ、あたしらにもいいの!?」
「いーのいーの!一応クラスメイト全員に作ってるから!」
すごい、全員って…。
そんなの男子にとって救世主みたいなもの。
そこまで絡んだことのない後藤(ごとう)さんから渡された、型抜きチョコ。
ホワイトチョコレートと組み合わせられていたり、丁寧なデコレーションがされていたり。
これを全員分だなんて……感動だ。
「あ、ありがとう後藤さん…」
「いーえ!…お家に帰って味わって食べて?」
「うん」
ゆっこと関わって、櫻井くんと話せるようになって。
それは困ることばかりじゃなかった。
それまでは地味で目立たない私だったのに、こうして変わったこともある。