ノート
「あっれー、早いね」
俺より早く来ておきながら綺羅が言った。
部屋の鍵を開けているとこだった。
会話するたびに、瞳が見開かれ、まつげがばさばさと動く。
「あぁ、うん……少しね」
がちゃり、と鍵が開く。二人、なかに入りながら俺は聞いてみた。
「学校に行きたくない気持ち、ってわかる?」
綺羅はそうだねぇと苦笑いしながら言った。
「あたしも一時期、いじめられていたから。怖かったかな」
「それなら、小さいとき俺もあった」
やり返すことしか頭に無かった俺は、すぐやり返しに行った。だから行きたくないと思わなかったから、いじめられたことと学校に行きたくないことが、どう結びつくかわからない。
「うっそー、それ、すごいね」
綺羅は弾けるような笑顔を見せた。
「すごくはない、けど」
抵抗したってしなくたって、 死にたいと感じたなら同じことだ。
死んだら他に恐れるものが無いというのなら踏み出すことも可能に思えた。