ノート
それから3日、俺は眠ったり起きたりを繰り返した。
崩れかけていた心が決壊するのははやくて、腕を切るだけじゃ足りなくなっていた。
「物じゃない、物じゃない、俺は物じゃないものじゃない」
俺は物じゃない。
ノートも、売るようなやつじゃなかった。
人生も。生活も、商品なんかじゃなかった。
あれ?
俺は物なんじゃないか。こんなに尊厳がないなら、なっちゃんも俺を物だと思うんじゃないか。
物だから売られたんじゃないだろうか。
俺は、何もかもが物だったんだろうか。
熱でぼんやりした頭は、それでうまいこと辻褄を合わせた。だとしたら俺は、お金みたいなものだから傷付くのはおかしいだろう。
「っはは……あははは! アハハハハッ」
なんだ、そうか俺は物だから身体を切っても痛くないんだ。感情が麻痺していたからじゃなくて単に無機物。河辺が違ってたんじゃなくて俺の認識が違ったんだな。
布団に踞っていると、河辺から電話が来てそれには仕方なく出た。
「なにか」
「お前3日もいないってどういうこと」