籠の中の鳥
1 退屈

両脇にある大きな木が揺れる。たった1人で歩くこの道はとても心地がいい。学校の帰り道が唯一安心できる憩いの場所。みんなに合わせることで生まれる人間関係なんて退屈で仕方がない。それでも学校で1人になりたくはないからまた今日も取り繕う。やれと言われたことは大体はなんでもした。そのせいで第3者からみれば、私はあの子達と仲が良い女の子になることが出来た。金欠だから奢ってほしい、あれを買って来てほしい、合コンに付き合ってほしい、あの子が嫌いだからいじめてほしい、好きな人と付き合えるように協力してほしい。それがたとえ私にとって都合が悪いものだとしても言うことを聞いた。人間関係の怖さは、嫌という程私の首を締めた。それは家に帰っても同じ事。幼い頃、父と母は離婚し、私は母に引き取られた。そしてその数年後、母は再婚し今は母とその再婚相手と私とで暮らしている。その空間はたまに吐き気がする程の嫌悪感に苛まれた。義父は私にセクハラまがいのことをする事が何度かあった。その度に誤魔化し逃げてきた。母は疲労でイライラする事も多く、私はとにかく機嫌を損なわないよう慎重に振舞った。たまに2人とも仕事か何かで帰ってこない日があり、その日が私にとって安心できる唯一の日。小さい頃から既に私の居場所はなかった。おかげで作り笑いが上手になった。本物の笑顔を忘れていた。
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