跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「疲れているのか?」

首を小さく横に振って否定する。

「復刻盤のタンブラーの発表がいよいよ迫って、うまくいく自信はあるのになんだか少し怖くなって……」

岸本さんについて自分から話題に出したのに、耐えきれなくて話題を逸らす。自覚したばかりの私の気持ちなんて話せそうにない。

「ああ。新しく作った、あのアイボリーの粉引きとトルコブルーはとくによかったな」

よかった。千秋さんも話を合わせてくれた。
彼の褒めたデザインは、若い人にも気に入ってもらえるようにと新たに加えたもので、その出来具合に私も満足している。

「じゃあ、我が家用にワンセット買ってきます」

「あれで、愛佳と一緒に晩酌をするのもいいかもな」

向けられた笑みに、現金にも胸がドキドキしてくる。さっきまでの不安がなくなったわけではないが、疎まれるような存在ではないのだと安堵する。

こうして、自分の立ち位置を確かめていなければ自信が持てないという事実は、見えないふりをして。

大丈夫。彼は私を妻だと認めてくれている。そこに恋愛感情がなかったとしても、この立場は簡単には変わらないのだから。


その晩も、千秋さんは避妊をせずに私を抱いた。
最初に抱かれた日だけは避妊について確認されたが、それ以降は聞かれていない。そこに、彼は私との子どもを望んでくれているのだと確信できてほっとする。

子どもができれば、千秋さんとの関係もますます強固になるはず。菊乃さんだって喜ばせてあげられる。

そんなふうに考えてしまい、慌てて否定した。千秋さんを私につなぎとめるための道具に子どもを使いたくないのに、自信のない私はどうしても後ろめたい考えに囚われそうになる。

千秋さんだって、先のことを考えてくれている。だからきっと、この生活は変はわらず続いていくはずだと自身に言い聞かせながら、彼の隣で眠りについた。

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