跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
うたた寝から目を覚ました私を待っていたのは、『夜はこれからだ』という宣言とともにはじまる千秋さんからの尋問だった。そう、まさしく尋問だ。

眠る直前までの甘い雰囲気はすっかり霧散しており、じわじわと追い詰められていく感覚に、私がたじたじになったのは言うまでもない。

岸本さんとのやりとりは大まかに知られていたが、具体的になにを言われて私がどう思ったのかをすべて明らかにするまで追及される。
『千秋さんが好きだから苦しかった』とか白状させられて、なんの罰ゲームかと羞恥で涙が滲んだが、それで絆されてくれるような人ではない。
 
寝室を別にしようと言い出したのは私だったが、すぐさま夕飯も必要ないと追い打ちをかけたのは千秋さんだ。あれは意趣返しだったらしい。その頃から、なにかしら察していたようだ。

『一緒の時間が減って、寂しかったろ?』と言われて、意地でもそんなわけないと反論したいのに、口から出たのは指摘されたのと同じ『寂しかった』という本音。さらに『俺もだ』なんて耳元でささやくのも狡い。

この人に敵うわけがないと難しく考えるのを放棄して、自分の気持ちに素直に従って千秋さんに抱き着いた。

尋問の最後には、ひとりで病院へ行ったと正直に告白した。片眉を上げてなにか言いたげな顔をした千秋さんだったが、このときだけは文句はひと言も出てこなかった。
代わりに『ひとりにして、すまなかった』と神妙な顔で謝罪をされて、胸がしめつけられた。

私の行動は、彼を傷付けてしまったのかもしれない。千秋さんには、もう二度とこんな顔をさせたくない。
これからはいっさいの隠し事をしないと約束して、ようやく尋問から解放された。

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