跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「かわいいやつだな。たまに爪を立てられるのも悪くないが……」

髪に口づけながら発する言葉が意味ありげに途切れるから、どうしたのかと顔を上げた。

「お仕置きが必要そうだな」

「は?」

戸惑う私の後頭部に片手を添えた千秋さんが、有無を言わさず口づけてくる。
上下の唇を甘噛みしながらぺろりと舐られて思わず口を開けると、すかさず千秋さんの熱い舌が侵入してきた。

「んん……」

久しぶりの感覚に翻弄されて、彼の腕に縋りつく。

「愛佳、もっとだ」

唇が離されたのはほんの一瞬だった。互いの鼻が触れる距離でそうささやいた千秋さんは、再び深い口づけをはじめる。

「はぅ……ん……」

彼に教えてもらった通り、鼻で息をしながら必死についていく。上下の歯列をゆっくりとなぞった熱い舌が、私の舌を絡めとる。

執拗なほどに表面をこすり合わせた後に軽く舌を嚙まれて、背中がぞくぞくしてきた。たまらず逃げ腰になるが、逆にぐっと引き寄せられる。
全身から力が抜けるほど長く続いた口づけは、最後にじゅっと舌を吸ってやっと離れていった。

「愛佳」

首筋に顔を埋めながら、千秋さんが私を呼ぶ。彼の鼻が、首から鎖骨にかけて何度もなぞっていく。

「愛してる」

「私も、愛している」

考えるまでもなく自然とこぼれ落ちた言葉に、やっと打ち明けられたと心が満たされていく。同時に頬を伝った涙は、彼の唇に吸い取られていった。

キス以上のことをするつもりはないらしく、髪に頬に耳元にとひたすら口づけられる。その間彼の手は、ずっと私の背中をなで続けている。
その穏やかな触れ合いが心地よくて、瞼を閉じて千秋さんにもたれるように体を預けた。

「愛佳は俺のものだ」

ここまでよほど気を張っていたのか、甘やかされる心地よさに次第に眠くなってくる。そのまますっと意識を手放した。

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