跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「新橋色? 初めて聞く名前だな」

彼の関心を得られたと、つい前のめりになる。興奮が抑えきれず、この場には父や志藤さんもいることが、私の意識からすっかり抜け落ちている。

「でしょ? こういう色味も作り出せるんですよ。用意した茶菓子から考えて、これもいいんじゃないかって」

斜め前に座る志藤さんも、「失礼」と言いながら皿を持ち上げて裏面を確認している。どうやらこれを選んだのは正解だったようだ。

「加藤社長。一度どんな色の製作が可能か、一覧を用意してもらえませんか? それによって、ますますデザインの幅も広がるでしょう」

タイルの話はそこでひとまず終えて、さらに経営について話は続いた。
不安など微塵も見せずに堂々と話をする千秋さんを、尊敬の眼差しで見つめる。

見合いをしてから入籍するまでの三カ月の間、加藤製陶のために彼が相当時間を割いて考えてくれていたのが伝わってくる。
及川の社長が暇なわけがない。きっと、無理をしてでも今日のために注力してくれたのだろう。

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