跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
父の方へ向き直った千秋さんは、丁寧な口調で話を続ける。

「定番品ですが、加藤としては比較的安値とはいえ、素材から製法までこだわっているためにそれなりに値が張り、海外製品には勝てないでしょう。とくに今後意識したい若い世代は、より安いものを求めるはず。ですので、定番商品はいったん廃止にして、当面はタイルと高級ライン、それからコラボ商品に注力していただきたい」

渡された資料を手に、父も真剣に考え込んでいる。そこには、見てきたばかりの岐阜の窯元の現状と問題点、改善案まで示されている。及川の通常業務もこなしながら、短時間でこれをまとめ上げた千秋さんには頭が上がらない。

「すでに岐阜の方で、タイルの生産が可能かどうかの確認が取れている。おまけに、そろえる必要のあるものまでピックアップされているし、手配のめども立っている。それに、向こうの社員の反発がないように考えられている」

独り言のようにつぶやいていた父は、そこで言葉を切って顔を上げた。

「及川社長、ありがとうございます。本来なら、私が気づいて動くべきところを、あなたに頼ってばかりで……。この資料からは、従業員をひとりも解雇せずに再建するという意図が、あらゆる部分から感じられる。本当に、ありがとうございます」


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