跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
父の言葉に、改めて資料に視線を戻す。
経営が傾きつつある会社が、従業員を解雇するなど珍しい話じゃないが、千秋さんの案にはそんなマイナスな手立てはいっさい見当たらない。その事実に感動して彼を見れば、当然だとでもいうように自信満々な表情をしていた。

「加藤社長。私がこの件で動くのは、加藤のタイルに大きく期待しているからです。最初に売り出すマンションだけでなく、もういくつかの別の提案もさせてもらっているぐらいだ。将来的には、小売店の内装にもどんどんかかわってもらおうと考えています。及川としても失敗は許されないですし、なにより、愛佳と結婚して親族になったんだ。当然、全力を尽くしますよ」

「ありがとうございます」

千秋さんの言葉に感動を隠せない父が、改めて深々と頭を下げた。その隣で、私も同じようにする。

「それでは、この計画に則って進めていきましょう」

見合いの日、騙されたと頭ごなしに拒否ばかりしていたのに、今では千秋さん存在は加藤にとってなくてはならないものになっている。

いくら及川側にもメリットがあるとはいえ、初動で実際に動いているのはほとんど及川だ。もっと言えば、千秋さんが主体となって自ら指揮をとっている。

いつも平然としているけれど、おそらく彼の負担はかなり増えているに違いない。ここまで尽くしてくれる千秋さんに、なにかお返しができないだろか。

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