跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
この人は相手に対する気持ちがあろうとなかろうと、そういう行為ができるのだろうか。こんな子どもっぽい、ペット扱いの私とでも。

「い、今から?」

「ああ」

当然のように同意される。
結婚したのだから、そういうこともあり得るとわかってはいた。でも、まったく経験のない私に、少しの覚悟もないまま今すぐになんて無理だ。

「こ、心の準備というものが……」

「そんなものを待っていたら、いつになるやら」

間違いなく決心なんてつきそうにないと、見透かされている。

おもむろに立ち上がった千秋さんが、向かいに座る私の方へ近付いてくる。緊張で震え出した指先をぐっと握り込んだ。

本気なのだろうかと、この期に及んで逃げ道を探してしまう。

「愛佳」

それまでと打って変わって、甘さの滲む声音で呼ばれてドキリと大きく胸が跳ねた。促されて立ち上がったが、顔は上げられそうにない。

「嫌か?」

俺様のはずなのに、ここで下手に出るなんて狡い。決定権を委ねられても、応えられるはずがない。

顎に優しく添えられた手が、私の顔を強制的に上げさせる。熱のこもった彼の瞳の中には、頼りなさそうな自分が映っていた。

嫌なのかどうかと自身に問いかけてみれば、嫌ではないと即答できる。私にとって千秋さんは尊敬できる人だし、人として好きだ。

彼を慕う気持ちに偽りはないが、そこに恋愛的な意味での好意があるかと聞かれたら迷いが生じる。この人に尽くしたいというこの思いは、果たして尊敬と感謝からだけなのだろうか。

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