跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
『加藤愛佳ちゃんっていうのよ。二十四歳の若いお嬢さんよ』

すでに相手の女性を〝ちゃん〟と呼んでいる祖母に、眉をひそめた。
人一倍行動力のある祖母のことだから、沈黙していた一年の間にいろいろと用意をしてきたのだろう。後ろにさらに十人以上の候補がいたとしても、まったく驚かない。

それよりも相手のアピールポイントは若さだけかと、うんざりしてため息を吐きそうになる。

『どういう方なんですか?』

形だけでもとそう尋ねると、途端に祖母は嬉しそうな顔をした。そして、昔岐阜でお世話になった親友の話から、その方が亡くなったためにすっかり疎遠になってしまっていた昨今までの事情を饒舌に語る。

『それでね、その妙ちゃんの旦那さんが営んでいた加藤製陶が、最近業績不良で……』

加藤ブランドの名はもちろん知っている。たしか、祖母の家にもいくつか加藤の陶器があったはずだ。

『昔、孫同士を結婚させたら、私たち親戚になるのねって話してたのよ。妙ちゃんが亡くなってその話も流れてしまってたんだけど、今こそ彼女の家に恩返しをするときなのよ!』

本人たちの意思などそっちのけにした、はた迷惑な話だ。
少女に戻ったようにはしゃぐ祖母を横目に、今度こそため息を吐いた。


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