桜が咲く頃に、私は
「やー、でも本当に良かったよ。あんた、目ん玉飛び出て身体中おかしな方向に曲がってたんだから! 脳みそドバーッ! 血がブッシャーッ! て感じでさ! 絶対に死んでたのに……え、冷静に考えたらなんで生きてんの!?」


よく見たら私と天川の周囲には血溜まりが出来ていて、明らかに失血死していてもおかしくない量だった。


「私がいい子だから、神様が生かしてくれたんだよ。な?」


俯いて、悲しそうな目をしている。


その手には無惨にも壊れたギター。


それを見詰める天川空は……なんだか小さな子供のようにも見えた。


「……壊れた……か」


寂しそうな声は、何かを諦めたかのように聞こえた。


なんか……悪いことしたかな。


子供を助ける為とはいえ、車道に飛び出した私を助けようとしてくれたんだよね。


「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう。これあげる」


野次馬の中、私が助けた子供がポケットからキャンディを取り出して私に手渡してくれた。


もしも私が助けなければ……この子があの世界に行っていたんだろうな。


こんな小さな子が、一人で。


そう考えると、まあ良かったのかもしれない。


子供と手を繋いだ母親が、何度も何度も頭を下げていた。
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