桜が咲く頃に、私は
〜昼休み〜

家出少女の私はお弁当なんてものはなくて、いつも学校の自販機でパンと飲み物を買っている。


今日は……チョココロネの気分だ。


「あー、腹減ったわ。昼飯食ったらもう放課後みたいなもんだよねー……って早春、愛しの彼氏が走って来たけど」


「誰が愛しの彼氏なんだよ。広瀬も飲み物くらい買うだろ」


そうは言いつつも、チラリとその方を見ると、慌てた様子で1000円札を自販機に入れて、何本も飲み物を買っている。


私がここにいることにも気付かない様子で、ペットボトルを4つ抱えて直ぐに廊下に飛び出して行ったのだ。


「ああ、相変わらずのパシリくんだねぇ。愛しの早春がいることにも気付かないなんてさ」


「翠、いい加減にしないとぶつよ? てかさ、広瀬ってパシリやらされてるけど、ちゃんと金もらってんのかな?」


「はぁ? 本気で言ってんの? いや、私も知らないけどさ。気になるなら聞いてみれば?」


こういう時、いつもの私なら「別にどうでもいいや」と言っているところだろうけど、口から飛び出した言葉は違った。


「うん、そうする」


「え? マジ?」


翠に頷いて、私は広瀬を追って教室に戻った。
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