桜が咲く頃に、私は
夕飯を作って、三人で一緒に食卓を囲む。


「そういや夢ちゃん、推薦受かったんだって? どこの高校行くの?」


「あ、うちから一番近くの高校ですよ。500mくらいしか離れてないからそこにしたんです」


何気ない会話で、翠は「ふーん」と軽く返事をしたけど、首を傾げて考え込んだ。


「ここから一番近くって……もしかして、ここらで一番偏差値の高いとこなんじゃ……」


もしかしなくてもそうなんだよね。


私達みたいに底辺高校に通うわけじゃなくて、バリバリの進学校に行くんだ。


「夢ちゃんは私達と違って、頭が良いんだから。翠が10人いても夢ちゃんには勝てないよ」


「いや、それは早春もでしょうが。てか、頭が良くて家事が出来て可愛いとか……どれか一つくらい私にくれても良くない!?」


最近になって、ようやくこの食卓にも笑いが戻って来た。


そうだよ。


夢ちゃんは頭が良いから、頭の悪い私があれこれ考えなくたってわかってくれるはずだ。


だから、私はしっかりと想いを伝えることが出来れば。


私と空の運命を、夢ちゃんに伝えれば……なぜ空が死んだのか、これからの私の死の運命を理解してくれるかもしれない。
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