桜が咲く頃に、私は
なんて、ちょっぴりしんみりしてしまう話もそこそこに、冷蔵庫の中を確認して、材料を出して行く。


「こりゃあ、明日は食材の買い出しだからだね。翠はカレーと肉じゃが、どっちがいい?」


「僅差でカレー。あ、もう変更はダメだからね。カレーの舌になっちゃったからさ」


こういう点で、一切迷わないのはありがたい。


私は決めきれないところがあるからさ。


なんて話をしていると、アパートのドアが開いて夢ちゃんが帰って来た。


「ただいま。あ、今日はカレーなんだね。待ってて、鞄置いてくるから」


もう、翠がいるのも当たり前になって、夢ちゃんにも少しずつ笑顔が戻って来た。


このまま、私が死んだ時に翠が夢ちゃんを支えてくれたら……と考えてしまうけど、人任せにはしたくない。


それは逃げのような気がするから。


空が死んだ時がそうだったように、自殺をしても怒られるから頑張って生きると思わせることが出来れば。


それが私が出来る、夢ちゃんへの最後のプレゼントだ。


問題は、どうやってそれを伝えれば良いのかということだ。


長年一緒に暮らした空と違って、私はまだ三ヶ月ほどしか一緒にいないのだから。
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