桜が咲く頃に、私は
「ハッ! 一年も帰って来ないで、何が自分の部屋よ! この家はね、もう私の物なんだからね! あんたには部屋を貸していただけで、帰って来ないんだから私がどう使おうと勝手でしょ! てか、せっかく良い気分だったのが台無しよ!」


私の布団を被ってはいるけど、その下は二人とも裸なのがわかる。


「う、うへぇ……よりによって……相変わらずのクズっぷりだね」


翠の感想は間違いない。


いくら男に言われたからって、娘の部屋に連れ込んで、それで興奮する男といかがわしい行為をするなんて、気持ち悪過ぎて吐きそうになる。


「クズだね。でも、クズで良かったよ。これで1ミリの罪悪感も後悔もなく、離れられるから」


お母さんの表情が険しくなる。


クズでも、娘にクズと言われるとプライドが傷付いたのか、枕元にあった目覚まし時計を掴んでこちらに投げ付けた。


だけどそれは私達には当たらず、壁に直撃して床に転がった。


「誰がクズだって!? どうせお前も、一年生きる為に男に股開いて生きて来たんだろ! この程度で人を見下してんじゃないよ!」


それに関しては反論はしない。


空と一緒に暮らすまでに、そんなことが無かったかと問われたら、無かったとは言えないから。
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