桜が咲く頃に、私は
『そればかりはどうしようもありません。ですが、この階段の先で待っていれば、いずれ再会出来るでしょう』


「そっか……そうだよね。わかった。じゃあ連れて行ってよ。私、早く逢いたい人がいるんだ」


もう、私に出来ることは何もない。


生きている夢ちゃんや翠が、私のいない世界で、愛する人と出会い、新しい家族を作って。


必死に生きて、いつかはここに来る。


私はそれを待っていれば良い。


『ふふ。桜井早春さん、後ろをご覧なさい』


天使が微笑んで、私の後方を指さして。


振り返ってみると……。









「早春、また逢えたね」








そこに立っていた空。


私は声を掛けるよりも先に走り出していた。


飛び付くようにして抱き締めて、その勢いで空が雲の上に倒れ込む。


「バカ……空がいない日々が、どんなに辛かったか知りもしないで……」


「悪い。でも、早春にはどうしても16歳になってほしかったんだよ」


抱きついたまま泣く私を、優しく抱き締めて。


『ふふ。それではそろそろ参りましょうか。僭越(せんえつ)ながら、天国までの旅のお供は、私が……』


起き上がって、天使がそこまで話すと、空は首を横振って。


「大丈夫。ここからは二人で行くから」


そう言うと、天使は微笑んでくれた。


『そうですか。それではこれは私からのプレゼントです。長い、長い旅になりますが、どうぞお幸せに』


指をパチンと鳴らすと、私と空の服が変化して。


真っ白なタキシードと、真っ白なウエディングドレス。


「行こう、早春。どこまでも、二人で」


「うん……ありがとう。空。私は…… 私の人生は、生き返ってからが一番幸せだったよ」


手を取って、私達は歩き出した。


長く続く天国への旅路を。


大丈夫……私達なら、大丈夫だから。


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