桜が咲く頃に、私は
その後教室に戻って、今までクラスメイトを見下していたことを謝った深沢は、どこかスッキリしたような顔をしていた。


もちろん、広瀬みたいに優しい人ばかりじゃないから、許してくれるかどうかはこれからの深沢次第なんだけど。


夢ちゃんも思ったほどはショックを受けていなかったようで、「また後でね」と言って空と一緒に帰って行った。


トラブルもあったけど、皆と一緒に一つの目標に向かって協力しあった日々が終わろうとしていた。


後夜祭の時間。


私は広瀬と二人、屋上にいた。


「終わったね。学校祭。皆頑張ってくれて、なんか……うん。楽しかった」


「そうだねぇ。今は充実感よりも寂しさの方が強いかな」


この半月は、もしかしたら私の余命みたいなものだったのかもしれない。


必死に何かに向かって皆と力を合わせて、今日という日に全力で挑んでさ。


そして、それが終わったらもう、何もなくなってしまう。


皆に「楽しかった」という思い出だけ残して、今日という日は過ぎ去ってしまうんだ。


それが、この寂しさの正体なのかもしれない。


「……学校祭の準備期間で、僕はますます桜井さんが好きになったよ。皆、桜井さんは思ったより話しやすくて、優しいって褒めてたんだよ? 知ってた?」
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