桜が咲く頃に、私は
嬉しそうにそう言った広瀬に、照れながら答える。


「そ、そんなの知らないし。てか、私は広瀬の彼女なんだし、あんたが大事にしてることは私も大事にしたいって言うか……あんたが頑張ってるから、私も頑張るんだよ」


しどろもどろになりながら、浮かぶ言葉をたぐり寄せて何とか声にしたけど……上手く伝わったかな。


「……凄いね、桜井さん。僕が好きになった桜井さんは、誰にも染まらずに自分を貫いてる凄くかっこいい人だと思ってた。でも、いつも寂しそうでさ。なのに、その印象も変わっちゃったな」


目を細めて、後夜祭の会場になっている校庭を見る広瀬に、少し不安を覚えた。


もしかして昔の私が好きで、今の私はイメージが違うんじゃないかって。


「ご、ごめん。私らしくないってことだよね。そうだよね……私があんたの為に何かしたいとか、全然らしくなかったね。安心してよ。嫌なら前みたいに……」


「もっと好きになったよ。僕は毎日、桜井さんを好きになってる。優しかったり、かっこよかったり、可愛かったり……だから絶対、明日の桜井さんも好きになる」


私のことを、こんなに楽しそうに話している広瀬を見て、思わず涙ぐんでしまった。

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