俺にしときませんか、先輩。

それなりに付き合ってはきたけど、恋人らしいことをしてきたわけじゃない。

蘇ってくる過去の恋人たちを頭に並べても………うん、黒歴史しかない。

ここは断ろう。



「ぜんっぜん慣れてないから、私じゃなくて、ほかを当たってよ」

「……先輩、慣れてないんですか」

「うん」

「…へぇ、」



なに、その本気で驚いてるような表情。

そして、なに、そのあとの穏やかな笑みは。



「だとしても、相談乗ってください」

「無理よ、むり!」

「じゃあ、姉ちゃんに言います、今日のこと」

「っ!」



私を覗き込んで、わるい顔をするのは、本当に小さかった頃のあの由都なの…?

思い出を辿ろうにも、由都は昔からあまり喋らないというか、ミステリアスなところがあって、これといった人物像は浮かんでこない。


数十秒考えた結果、ちっぽけな頭には、降参という選択肢しか舞い降りてくれなかった。



「…乗るわ、相談」

「ありがとうございます」
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