笑顔でありがとう
毎日、毎日通りすがるあの子。そして、その姿を無意識で追ってしまう自分。
二人の間を邪魔するかのようなフェンスがとても歯痒い。切れ切れの景色ではっきり見えないけど、小さくて、ぽっちゃりした姿は何となく可愛い。日常生活は順調で毎日が楽しかった。授業中は友達とバカ話。時々先生に教科書で頭を叩かれたりする。
ぼーっとして授業を聞いていた時、前の友達が振り返り、机の下から何かを渡してきた。手紙だった。
「これ、渡してって頼まれた」友達は小声で俺に手渡してきた。それをとっさに机の中に隠し、何事も無かったかのように平然を装いながら手探りで手紙を開こうとしていた。そっと取出し、うつむきながら、読み始めた。もう授業なんてどうでもよかった。
かわいい丸文字、目に映ってしまいそうなくらいカラフルに綴られていた。そして便箋はピンク色。俺は、一文字、一文字、丁寧に、何度も読み返した。同時に迷いも生まれた。俺でいいのかなぁ?あの子と上手く話せるかなぁ?まだ付き合ってもいないのに、空想の世界で自分の弱さを嘆いていた。自信が無かった。結局、俺は目の前の現実から逃げてしまった。
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