セカンドマリッジリング ―After story—

計画は密に行動は大胆に

「ほう、お前の方から涼真(りょうま)の代理をすると言い出すとは。いったいどういう心境の変化だ？」

　予想通り疑いを含んだような父、斗真(とうま)の言葉に颯真(そうま)はあらかじめ兄の涼真と打ち合わせした通りに彼が喜びそうな言葉を選んで答える。
　この後に花那(かな)のサポート役の件を話さなければならない、それを考えればなるべく機嫌は損ねない方が良いことくらい分かっている。

「俺も深澤(ふかさわ)の家のために色々と勉強をさせてもらってきました。このままいつ戻るか分からない兄さんのポジションを他の人間に任せるより、俺の方がよっぽど相応しいと考えたので」
「それならば自分がその席に座る方が良い、という訳か。意外だな、颯真にはそんな野心は無いと思っていたが」
　
　颯真の答えが気に入ったのか、斗真は口角を上げて意味深に頷く。昔から人並み以上の野心を持ち、深澤カンパニーをより大きなものに育て上げた深澤斗真は一筋縄ではいかない男だ。
　それでも大人しいとばかり思っていた次男の答えに斗真は感心したように顎を撫でる。これは機嫌がいい時の彼の癖だ。

「それで、医師の仕事はどうするつもりだ？　辞めるのなら早い方が良いだろう、本(・)気(・)で(・)涼真の仕事を覚えるつもりならばな」
「そうですね、それについては俺も職場と相談してきました。今すぐにとは難しいですが引継ぎ等を済ませて、それからになるかと。そこで、なんですが……」

　涼真に言われた通り颯真は、自分が医師の仕事を辞めれるまでは休みなどを利用し仕事を覚えたいと父親に伝えた。