セカンドマリッジリング ―After story—
「……あ、美海さん」
いつの間にか名賀の後ろに小柄な女性が立っていた。女性は可愛らしい笑みを浮かべているのに、何故か背筋がヒヤリとするような迫力がある。名賀に対して怒っている、それは一目瞭然だった。
チラリと隣に立つ颯真の顔を盗み見ると、彼はずいぶん気まずそうな表情をしている。名前を呼ばれた名賀はさっきまでの笑みを顔面に張り付けたまま微動だにしない。
「あの、えっと……?」
「あなたが颯真くんのお嫁さん? 少しだけ話は聞いてたけれど、こんなところで立ち話もなんだし中に入って一緒にお茶しましょう。ワッフルを焼いておいたの、食べて感想を聞かせてくれる?」
さっきまでの迫力ある笑みを引っ込め、今度は人懐っこい笑顔で花那の傍に寄り話しかけてくる。そのまま彼女は花那の手を取り玄関の中へと引っ張り、颯真にもついてくるように声をかけた。
……名賀にだけ冷たい視線を向けると、美海と呼ばれた女性は二人をつれて楽しそうに建物の奥へと歩いていってしまった。
「いいんですか? 先輩を置いてきてしまって。さっきの話は美海さんが思っているようなことじゃなくて、その……」
「いいのいいの、ああやって固まるってことは何かやましい気持ちがあったのかもしれないし。少しくらい困れば良いの」
自分のせいで二人の中が険悪なものになってはいけない、そう思って颯真は名賀のフォローをしてみるが女性はあまり気にしてなかったのか楽しそうに笑って見せた。
颯真と女性の関係がハッキリと分からず、花那が黙って二人のやり取りを見ていると……