セカンドマリッジリング ―After story—
しかし颯真の両親は滅多に彼に連絡などしてこない、盆正月も実家に近寄ることはほとんどないほどだった。それなのに、急になぜ? 花那は息を潜めるようにして颯真の会話の内容に耳を傾けた。
「……え? いいえ、何も連絡はありませんがそれがどうかしたんですか? え、兄さんが三日前から行方不明に⁉」
落ち着いていた颯真の声が急に大きくなり、花那はビクリと身体を震わせた。しかし颯真の兄が行方不明だと聞いて、すぐに気持ちを落ち着かせなければと大きく息を吐いた。
颯真は深澤コーポレーションという大企業の社長の息子だ。しかし彼は次男ということもあり、我儘を言って好きな仕事を選んだのだと花那に話してくれたことがあった。
彼の兄はとても優秀らしく、次期社長として頑張ってくれているから自分は自由に出来るのだとも。
「ええ、そうですね。俺の所にも半年は連絡が来ていなかったですから、今どこにいるのか想像もつきません」
どうやら颯真の両親は、弟である彼を頼ってきてはいないかと聞きたかったようで。颯真のとこにも連絡が無かったのを知ると、すぐに話を終わらせたようだ。
「……はい、分かりました。兄から何か連絡があれば電話します、それでは」
それだけを言うと颯真はスマホを耳から離して、通話ボタンを切ってしまった。その親子らしくない会話に、花那は複雑な気持ちになる。自分の知っている親子関係と颯真のそれはあまりに違っていたから。