門限やぶりしようよ。

頭の良い猿

 私の口内へ滑り込むように、ぬるりとした感触が挿りこんだ。

 それが彼の舌だと気がついたのはしばらくしてからだ。深いキスの方法は、もちろん知っていた。けれど、我が身に起こったことを認識するまでに時間がかかった。

 それ程までに、数時間前まで知らなかったはずの彼は夢の中の存在のようだった。けれど、確かにここに居ると言う熱くてしっかりとした存在感を持って狭い空間を暴れ回った。

 こうする時の作法など知らず目を開けたままの私とじっと目を合わせたまま、優の舌は歯列をなぞり私の気持ち良いところを探るように、ゆっくりとした時間をかけた。すこしだけ彼の顔が離れて、ようやくキスが終わったのだと知った。

「……顔が真っ赤になってる。慣れてないもんね。化粧は……してないの?」

「しっ……してるっ……でも、あまり濃く塗るの好きじゃなくて……多分、薄づきのタイプだから……」

 女性の使うファンデーションのタイプなんて知る由もないだろう彼は、ふーんと面白そうに笑った後、ちゅっともう一度触れるだけのキスをした。

「ほっぺも真っ赤。可愛い。琴音のファーストキス貰えて嬉しい」
< 25 / 47 >

この作品をシェア

pagetop