門限やぶりしようよ。

雨宿り

 雨に濡れるのを避けて屋根の下でやむのを待つことを、雨宿りと人は言うらしい。

 有名男子高校の制服を着て整った容姿を持つ彼は、すれ違う女の子たちの視線をよく引いた。だけど、特にそれに反応することもなかった。彼にとっての日常ならば、心を動かすこともないのかもしれない。

 傘を持たない私たちは、なんとなく私の降りた駅にあるベンチに座っていた。彼の取り留めのない話に耳を傾けていたら、駅名がアナウンスされ降りようと立ち上がった私に彼は当たり前のように着いて来たけれど、この駅が目的地なのかは聞いていない。

「え、お姉さん。大学生なのに門限あんの? やばい。すげー、箱入り。育ち良さそうだもんな」

 20時の門限があると、そう言ったら彼は大げさに驚いた。

「そんなに、驚くこと? 同級生はあるって聞くけど」

 私が目を瞬かせると、ニヤッと悪い笑みを浮かべた。
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