門限やぶりしようよ。
「俺、お姉さんの通ってる大学、なんかわかったわ。幼稚舎から大学までエスカレーターの外部からの転校などもほとんどない、正真正銘のお嬢様しか通えないところだろ。所作も綺麗だし姿勢も良いし、年齢にしては言葉遣いも綺麗で汚い言葉など使いそうもない。清いところで汚れなく純粋培養されると、そんな人間になるんだな」

 彼は私のことを、まるですべてを管理された温室でしか咲くことの出来ない花のように評した。清い水でしか生きられない魚のように、弱い生き物。

 それは自分でも痛いくらいに理解していた。

 自分の家と自分と同じような立場にいる女の子たちが集められた学校、そのふたつしか居場所はない。狭い世界に住む、考えの狭い人間。壁の向こうには広い世界があることを知りながら、踏み出すことも出来ない意気地無し。

 それが私。

「あなたが羨ましい。きっと、これから何にでもなれるね」
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