【電子書籍化】虐げられたうさぎ令嬢は、獣人の国で寵愛される。
第1章

◇プロローグ



 大陸の南に位置する王国・エンリケス。魔法大国であり火、水、大地、氷、風魔法のどれかが生まれた時から能力が備わっている。それが王族だろうと、貴族であろうと、平民であろうと。

 そして、類い稀な魔法――聖魔法である治癒魔法。その能力を持ち生まれた時代は平和が続くといわれている。


 ***


 エンリケス王国には三大貴族がある。剣術が長けている騎士一家であるアバーテ家、文官として国に貢献しているピアーナ家、魔法の名門であるバーニューデス家だ。

 その中で魔術師一家であり獣人の血が入っているのはバーニューデス家。伯爵の爵位を持っている彼らは当主である父や美しい母、三人の子供に恵まれていて将来は安泰だといわれている。そんな三人の中で世間には隠している、社交界にも姿を現さないご令嬢がいた――

「……なんでお前が本邸にいるんだ!」
「申し訳ありませんっお父様」
「顔を見せるな、と言っておいただろう!」


 彼女は頭を下げると笑顔を見せて本邸から去ろうとした。だが本邸から離れに行く道、すれ違いに金髪の青の目を持つ美少女が横を通った。


「まぁ、あなたに会っちゃうなんて今日は災難だわ!」
「そうでございますね、ロジータ様」
「掃除しておいてくださる?」


 その少女は、ロジータ。この家の子だ。私は彼女にとって穢らわしい存在なんだろう……そう感じたのは今始まったことじゃないから何度聞いてもなんとも思わなくなった。

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