【電子書籍化】虐げられたうさぎ令嬢は、獣人の国で寵愛される。



 お父様を中に案内して一応お茶を出す。


「……何か御用ですか」
「あぁ、セシール。お前には王宮に行ってもらうことになった」
「……え? 王宮、ですか」


 王宮はこの国の王族が住まう場所だ。それに貴族たちが集まり、パーティーが開かれたりする。そんな場所に私が? なんで……

 社交デビューすらしていない獣人と人間のミックスの私が呼ばれる理由なんて、もしかして治癒魔法の使い手だとバレてしまったとか? それじゃあ逃げないと!


「この国から隣国のカスティラン帝国へ嫁ぐ令嬢を一人出すことになった」
「カスティラン……」


 カスティランはお祖母様の母国だ、それに半分以上が獣人が暮らしている国。


「お前にピッタリだろう? きっと、獣人が住む国に嫁に出したいなど思う貴族はそうそういないはずだ。だがセシール(お前)は違う」
「……っ……」
「お前は獣人としての能力がある。この国では皆に煙たがれるだけ、結婚なんて望むことはできないだろう。ならば、獣人が住まう国で婚姻を結び子を成した方がお前にとったら幸せだと思う」
「そう、ですね」


 つまり『お前はこの国にとってもバーニューデス家にとっても邪魔だから早いとこ出ていけ』とでも言いたいんだろう。


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