身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
英知先生の相づちは止まった。
私も自分の膝を見つめて震えたまま、うまく呼吸ができなくなる。
ここへ来るまでずっと悩んだ。
誰にどうやって相談すべきなのか、数日前から私の小さな脳みそで考えていた。
答えが出たわけではないが、もうこれ以上、毎日顔を合わせる英知先生を裏切っている状態は耐えられなかったのだ。
彼は唇に指を添え、
「ん……それは」
と眉を寄せて唸る。そして、
「不思議だね。婚約者の僕に一度も抱かれたことのない君が、どうして妊娠するのかな?」
と、皮肉のこもった問いを向けた。
どんなときも声を荒げたりしない英知先生の最上級の怒りが、私へと刺さる。
「……英知先生……ごめんなさい」
絞り出した言葉があまりに情けなくて、瞳が潤んだ。
私の謝罪なんて、ちっぽけでなんの役にも立たない。
昔から問題を解決する力を持ち合わせていない。
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