身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
英知先生の部屋は白い壁とクリーム色のフローリング、観葉植物の緑に彩られている。
家の中まで入ったのは今日が初めてだ。
室内に着いたと同時に外は激しい雨となる。
窓を閉めていても打ち付ける雨音とざわめきが聞こえていた。
「座って」
テーブルを挟んで、ふたり掛けのブラウンのソファーが置いてある。
私は言われた通りに一方へ座った。
英知先生は冷蔵庫から二百ミリリットルのお茶のペットボトルを出し、私の前、そして向かいに座る自分の前に置いた。
「あ、すみません……」
「楽にしていいよ。で、話ってなにかな?」
英知先生は長い脚を組み、その膝の上で手も組んだ。
私の足は震えている。
太ももの上に重ねている手で押さえようとしたが、やがて全身が震え始めた。
話すって決めたんだ。
今日は私から英知先生を呼び出した。
話さなくちゃって。
「……どうしようって、ずっと悩んでたんです。いけないことをしてしまったってわかってるんですけど」
「うん?」
「私……妊娠、してるみたいで」
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