絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 ルーナは走って居間を飛び出していったまま、一日と欠かさなかった出勤の見送りにも玄関に顔を出さなかった。おそらく、なにかしら気に入らないことがあったのだろう。しかし、それがなんなのか俺には見当もつかなかった。
 俺は気を揉んだ状態で帰宅したが、玄関を入った瞬間にルーナが脛にバフッと飛びついてきて、ブラッシングを強請ってきた。特に、背中の左側を中心にブラシをあてるようしきりに訴えており、俺は求められるまま丁寧に梳かしてやった。
 その後ルーナは、これまた朝にもらい損ねたペロルをせがんで、甘えた声をあげていた。
 そんな姿を見て、朝の行動はたまたまだったのかと一度は納得した。しかし改めて思い返してみると、ルーナが俺に甘えてきたのは明確な理由を持った要求の場面のみ。意味もなく俺に体を寄せてきたり、スリスリと尻尾を絡ませてみたり、普段ならよくあるそういった接触が今日は一切なかった。
 もしかすると、いまだルーナは俺に対し、気を悪くしたままなのかもしれない。
「……ふむ、これは由々しき事態だ」
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