絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 わたしはレリウスさまが置いていってくれたマントを拾い上げると、手早く体に巻き付けて、ランプを持った。再び階段を上り、力を込めて扉を押す。
 結構な力が必要だったが、ネコの時とは違い扉を開けきることができた。
 ……レリウスさまは『ワーグナー筆頭大臣の直轄地まで残り三キロ弱』と言っていた。おそらく、コリンは既に狼煙筒を放ってしまっているだろう。もはや、一刻の猶予もない――!
 実は、わたしは袋の中で伸びていた間も、レリウスさまに袋から出された後も、必死に意識の糸を繋いでいた。体を起こすのはもとより、まともに目を開けていることもできない状態だったけれど、征伐隊の進捗や位置情報などを聞き逃さないよう、ギリギリのところで踏ん張っていたのだ。
 そして、以前レリウスさまの机に置いてあった資料によれば、ワーグナー筆頭大臣の直轄地はおよそ十二平方キロメートル。大臣邸は直轄地の中でも比較的王都に近い場所にあり、ここからならたぶん五キロくらい。休まず走れば、四十分ほどで着けるはずだ。
< 179 / 252 >

この作品をシェア

pagetop