絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 ルーナの口の端にクリームがついているのに気づき、人差し指の腹で拭い取る。
 普段からあまり甘いものを好まない俺の皿に、フルーツサンドは乗っていない。ルーナが目を輝かせるフルーツサンドに興味を引かれた俺は、クリームがついた指を自分の口もとに運び、そのままペロリと舌先で舐めた。
 甘さが抑えられたクリームは、とろけるような口溶けだった。なるほど、これにフレッシュフルーツが加われば甘さと酸味のバランスがより際立ち、さぞ美味だろう。
「ふむ、たしかにうまいな」
 ルーナはフルーツサンドに挟まっていた大粒のブドウみたいに目を真ん丸にして俺を凝視していた。
「ん? どうした? そんなに目を見開いては、綺麗な瞳が落っこちてしまうぞ」
 ルーナはパチパチと幾度か瞬きした後、まるで俺から逃げるみたいにパッと目を逸らし、そのままソワソワと落ち着きなく視線をさ迷わせていた。
 最終的には皿に残るチキンのサンドイッチに目線を止めたが、なかなか食べだそうとはしなかった。
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