愛しき人
『今日・・・奈央さん来ませんね。』

流しでコップを洗いながら、カクテルを作る
マスターに話かけると

「ん~。今日はよくしゃべったんじゃない?」

『はっ?』

「奈央ちゃん曰く、1日にしゃべる量が決ま
ってるらしくってさ。お客さんが多い日は仕
事終わって一切しゃべらないって、暇だった
り、しゃべり足りなかったらうちに消費しに
来るんだよ。」

『へ~。でも何でいつも1人何ですかね?』

「何?気になるの?」とレモンをスライスし
ながらニヤけるマスターに

『いや!ていうか気になるのは時々一緒に来
るイケメンの方だから!!』

(なに焦ってんだか・・・)

「あー、樹(イツキ)さんね。」
(樹っていうんだ・・・って誰だよ?!)


「奈央ちゃんの旦那~。はい、これ2番のお
客さん持ってって。」

とカクテルを渡さ
れ促される。



旦那ねっ・・・。

別にショックな訳
じゃない。


ただ、奈央さんと主婦っていう言葉が重なら
ない。


なんだかとても
不自然に思えた。
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