一途な部長は鈍感部下を溺愛中



正直なところ、すごいな、というのが素直な感想だった。


だって、私から見てもなんとなく分かるくらい、彼女らのアピールは東雲部長に少しも響いていなかったのだ。


私は男の人に自分からアタックなんてしたことも無ければ絶対に出来ないけど、きっと自分だったら、あんなに相手にされないところでもう心が折れてる。


だから素直に感心したし、ここまで熱心に誘われたら、部長も少しくらい揺らいだりするのかな?なんて思ったりもした。


そうじゃなくても、普段は明るくて優しい部長だ。彼女のあからさまなお誘いを断るにしても、「悪いな、今日は用事があるんだ」って、少し困ったように、でもできる限り彼女を傷つけないように、そう断るんだろうと勝手に思っていた。

きっと、誘った張本人である彼女もそう思っていただろう。


けど──、


「それは今ここでする話だったか?悪いが俺は、仕事の最中に私用を持ち込もうとするような、君のような輩が一番嫌いなんだ」


絶対零度の眼差しで彼女を射抜きながら、吐き捨てるようにそう言う彼の姿を誰が想像できただろう。



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