一途な部長は鈍感部下を溺愛中



まあ、東雲部長に辛辣に当られた女の子が、そんなところもカッコイイ〜!と目をハートにしていた時はさすがにちょっと引いてしまったのだが。恋は盲目とはこのことか……。


そんなこんなで、東雲部長にはっきりと確認した訳では無いけど、“東雲部長は女嫌い”という認識で私の中にインプットされている。


例え男の人が部長を飲みに誘ったとしても当然彼は嫌な顔をしないし、彼の態度が顕著に変わるのが女性相手の時であることは歴然たる事実だった。


だから、私はいつも怯えている。

私がいつ、東雲部長の機嫌を損ねて、人事部から飛ばされてしまう日が来るのかを。


……正直、不思議なくらいだ。

そんなに簡単に人事異動を操れる力があるのなら、どうして私を異動させないのだろう。


優しい人だから、しっかりとした理由が無い限りは、置いてくれているのかもしれない。



だからまさか、私を視察に同行させてくれるとは思わなくて本当にびっくりした。

きっと、私が女である限り、東雲部長からしたらできるだけ忌避したい存在であるに違いないのに。


「──さっちゃん?」


ふと、頭上からこちらを呼ぶ声が降ってきてハッと意識が引き戻される。



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