一途な部長は鈍感部下を溺愛中


月曜日、すっかり元気になった体で、私は人生で一番と言っても過言ではないくらい緊張していた。


時刻は朝の八時過ぎ。

九時始業、かつフレックスタイム制を取り入れている我が社では、この時間に出社している人は殆どいない。……が、東雲部長がいつもこのくらいの時間に出勤していることは知っていた。


目の前には「人事部」と表記されたネームプレートに、オフホワイトの扉。


この扉の先に部長が居るかもしれないと思うと、足が竦んでしまいそこから踏み出せない。


お詫びにと日曜日、行列に並んで買った有名な焼き菓子屋さんのお菓子詰め合わせを胸に抱いて、ドアを開けようと手を伸ばしたり引っ込めたりを繰り返している。


だって……だって、今思い返してもあまりにも恥ずかしい土曜日だったんだもの!


あの日もちょくちょく羞恥で死にかけていたけれど、東雲部長と別れて一人になってからは更に冷静になってしまい、あれは夢だったのでは? と思うような出来事の数々に翌日はのたうち回り悶えていた。


正直、まともに顔を見れる気がしない。

かといってあの日のことを、他のメンバーが居るところで口に出す勇気もなく、こうして早めに出社したのだ。



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