もう、離れるな 〜地味子×チャラ男の一途すぎる両片思い〜
「ん〜!!! So GOOD!! Amazing!!」

「なあケビン」

「なんだ」

「本当に、ここで良いのか?」

「文句があるなら、自分で決めれば良かったじゃないか」

「……別に、文句があるわけじゃ……ただ……」

「ただ?」

「もっといい所でも良かったんじゃないか?」

「バカだな〜ここで、こうして食べるのがいいんじゃないか」


そう言いながら、ケビンは蕎麦を思う存分啜っている。


「あーうまいなー。一度食べてみたかったんだよ、蕎麦ってやつ。でもあっという間に無くなっちまった。お代わり食えるのか?」

「外でもう1回食券買えばいけるよ」

「おーじゃあ、よろしくな、ナオ」

「えっ」

「だって俺、ジャパニーズ読めないもん」


俺は、まだ残っている自分の蕎麦を置いたまま、券売機へと足を運ぶ。


1杯300円。

駅の中にある立ち食い蕎麦屋。

ケビンが最初に選んだ場所だった。

どうしてこんな所で、と尋ねると


「憧れてたんだよ〜俺、こうやって人の目気にせずヌードル食えるの」


と満面の笑みで答えてきた。

その言葉の本当の意味を知っている俺は、苦笑いするしかできなかった。


「ほら、これで勘弁しろよ」


俺が券を渡す頃には、汁まですっかり飲み切っていた。


「おお、サンキュー!あと5杯はいける」

「やめとけ、コンビニにも行きたいんだろ」

「そそ、コンビニおにぎりってやつも食いたい。日本に行くなら1回は食えって、言われてるからな」


そう言いながら、ケビンは追加の蕎麦を音を立てて啜る。

みるみるうちに無くなっていくので、見ていて気持ちよかった。


「さて、と……じゃあそろそろ行こうか」


ケビンは3杯蕎麦を丸呑みして、ようやく満足したらしかった。


「行くって、どこに?」


まだそこまで日が暮れていない。

きっとどこか行きたいところがあるんだろう、と身構えた。

だが、ケビンはこう言った。


「お前の家にだよ」

「え?」

「話したいこと、あるんじゃないかと思ってさ」



ああ、そうか。



「コンビニでたくさんジャパニーズの菓子買うんだ〜」

「菓子だけでいいのかよ」

「こっちは日本の菓子買うのに10ドルはすんだよ!楽しみにしてたんだからな」

「10ドルあれば10個菓子食えるな」

「マジ天国みたいなところだな。それだけあれば、夜通し話ができるってもんだぜ」

「ははは……」



何となく、分かった気がする。

こいつが急に日本に来るって言い出した理由。




俺のためか。
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