よるの数だけ 守ってもらった


すっかり夜になった静かな町を、ただ手を引かれるがままに歩いた。

名前を知っているそんなに遠い駅ではなかったけれどはじめて降りた駅だった。



「こうしてると、僕ら、共犯って感じだね」


闇の中、つぶやかれた、呆れてしまうようなせりふ。



「なんで止めたの?」


まだ気持ちは晴れず、邪魔されたことへの苛立ちをぶつけようとした。


「止めるでしょふつう…」


今度は無視されなかった。


「ふつうって何。鳥は良くて人間はだめなの?」

「…だめに決まってる」

「ははっ。いのち差別じゃんね。はは、無害そうなあんたでも差別とかするんだー?ははっ」

「……だめだよ、人は。後戻りできなくなる」



頼りない街灯が一定距離を保って設置された川沿いを歩くわたしたちの会話は、ぜったいにふつうとはかけ離れている。


「後戻り……ははっ、もうできるわけないじゃない」

「できるよ」


簡単に言ってくれる。



わたし、犯罪者なのに。



「できるよ。鳥羽さんのふつう、取り戻そうよ」

「わたしのふつう………」


そんなものはきっともともと存在していなくて。
はたまた元の形状を忘れて馬鹿になったんだ。


「戻せるなら戻したいよ」


何度願っても元通りにはならなかった。



「治療は成功して後遺症もなくて、今までと同じだろって………ぜんぜん、ちがう。わたしには、もう、ぜんぜんちがうものなの」



跳ぶ瞬間、あの時の無残な脚が脳裏に浮かぶ。

また壊れたらどうしようって、怖気づく。


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